就職氷河期に私が入った会社の求人票には、賞与3.6か月と書かれていました。ところが、実際に支給されたのは約0.8か月でした。
3.6か月と0.8か月では、差は約2.8か月です。入社前の私は3.6という数字を見て、「毎年このくらい受け取れるのだろう」と考えていました。
しかし、3.6か月が前年度の実績なのか、会社の標準なのか、特定の社員の例なのか。初年度も同じなのか。何を基準に計算するのか。私は一つも確認していませんでした。
求人票の賞与欄で見るべきなのは、月数の大きさだけではありません。「誰の・いつの・何を基準にした数字か」を、面接と契約時の書面で確かめる必要があります。
求人票は3.6か月、実際は約0.8か月だった

私が就職したのは、医療用ガラス製品を作る会社でした。古い工場で、作業環境も良いとは感じられませんでした。会社は年間約4,000万〜5,000万円の赤字が続き、3年以上昇給がなかった時期もあります。
リーマンショック後には取引先を5社以上失い、売上は10億円を下回りました。会社の業績が厳しければ、賞与が下がること自体は想像できます。それでも、入社前に見た3.6か月と実際の約0.8か月の落差は大きいものでした。
私は「3.6か月」の主語を確認していなかった
今振り返っても、3.6か月がどの期間・どの社員を対象にした数字だったか、私は説明できません。当時、質問せず、資料も残していなかったからです。
そのため、「求人票が間違っていた」と単純に断定することも、「業績が悪かったから仕方ない」と片づけることもできません。私が確実に言えるのは、求人票で3.6か月を見て入社し、実際に受け取った賞与は約0.8か月だったということです。
賞与の月数は、5つの中身を確認しないと読めない
1. 実績なのか、見込みなのか
直近年度の支給実績なのか、通常時の想定なのか、会社の規程上の目安なのかで意味は変わります。「3.6か月ですか」ではなく、「いつの支給実績ですか」と聞けば、数字の時点を確認できます。
2. 誰が対象の数字なのか
全社員の平均なのか、正社員だけなのか、一定の勤続期間がある人なのか。自分と条件が違う人の実績なら、そのまま自分の見込みにはできません。
3. 入社初年度はどうなるのか
算定期間の途中で入社すると、初回だけ在籍期間に応じた扱いになる可能性があります。私は当時、初年度と通常年度を分けて確認していませんでした。
4. 何を基準に「1か月」とするのか
自分が想像する月給全体と、会社が賞与計算に使う基礎額が同じとは限りません。月数だけで手取り額を想像せず、どの金額を基準に計算するのかを確認します。
5. 業績や評価で、どこが変動するのか
会社業績、部門業績、個人評価、在籍期間など、支給額が変わる条件を聞きます。「業績による」だけでなく、固定部分と変動部分があるのかまで分かれば、数字を現実的に見積もれます。
求人票・面接・労働条件の書面は、別の段階として見る

求人票:応募を決めた条件を保存する
求人票や求人広告は、応募時点で何が示されていたかを確認する資料です。厚生労働省の労働条件Q&Aでは、求人票の条件が直ちに実際の労働契約の内容になるわけではない一方、面接で説明された条件と違う場合は、まず違いが生じた理由を確認するよう案内しています。
応募後に掲載が終わることもあるため、私は今なら求人票の画面やPDFを手元に残します。賞与だけでなく、基本給、手当、仕事内容、勤務地、勤務時間も一緒に保存します。
面接:違う説明が出たら、その場で理由を聞く
求人票の3.6か月に対して、面接で「初年度は別」「業績次第」と説明されたなら、どこがどう変わるのかを確認します。質問内容と回答を面接後にメモし、可能なら更新された条件を文書やメールで受け取ります。
契約時:労働条件通知書などの書面と照合する
厚生労働省は、労働契約締結時の条件をできる限り書面で確認すること、使用者が一定の労働条件を明示することを案内しています。賞与は、定めがある場合に明示対象となる事項の一つです。詳しい項目は採用時に明示される労働条件で確認できます。
求人票と面接の説明だけで納得せず、契約時の書面で賞与の定めや参照する規程を確認します。分からない表現があれば、署名や入社の前に質問します。
私が今なら面接で聞く、賞与の5項目

- 求人票の3.6か月は、いつの実績ですか、それとも見込みですか
- その数字の対象者と集計範囲はどこまでですか
- 入社初年度の支給は、通常年度とどう違いますか
- 賞与の月数は、どの給与項目を基準に計算しますか
- 会社業績・個人評価・在籍期間で、どの部分が変動しますか
すべてに確定額の回答が出るとは限りません。それでも、数字の根拠を尋ねたときの説明が具体的か、求人票との違いを隠さず説明してくれるかは、入社を判断する材料になります。
入社後に求人票との違いへ気づいたら、資料を並べる
最初に、求人票、求人広告、面接時のメモ、採用通知、労働条件通知書、雇用契約書、就業規則、賞与明細を時系列に並べます。「何となく違う」ではなく、どの文書のどの条件と、実際の何が違うかを確認します。
次に、人事や会社へ計算根拠を確認します。私のように月数だけを覚えていても、資料と説明がなければ後から差の理由を確かめにくくなります。
ハローワークの求人で内容と実際が異なる場合は、最寄りのハローワークまたはハローワーク求人ホットラインへ申し出る案内があります。個別の労働問題について相談したい場合は、厚生労働省の総合労働相談コーナーから地域の窓口を探せます。
3.6か月を疑うのではなく、3.6か月を読めるようにする
求人票の数字をすべて疑っていたら、応募先を選べません。反対に、数字を固定された約束だと思い込むと、私のように入社後の落差が大きくなります。
確認するのは、実績か見込みか、誰が対象か、初年度はどうなるか、何を基準に計算するか、何で変動するか。この5点です。
私は3.6か月という目立つ数字だけを見て、その定義を聞きませんでした。今なら、求人票を保存し、面接で差の理由を聞き、契約時の書面まで照合します。賞与の月数は、金額ではなく確認を始める入口として読みます。
この会社で給料だけに頼る不安が強まり、副業を始めた経緯は会社依存を減らすために副業を始めた話にまとめています。
